もう十年前のことだったか。
ぼくは本屋で『アフリカの音』という沢田としきさんの絵本を見つけた。
それはぼくが大好きな西アフリカの太鼓と踊りの絵本だった。
そしてそれは、ぼくも西アフリカで何度も出会った祭りの光景だった。
老若男女、あの時に出会った村人たちが絵本の中に登場してくる。
絵本に付けられた数行の短い文章を読みながら頁をめくっていくと、
あの時の太鼓に合わせて手をたたき脚を踏みならし歌いかけ声をかけ合う声が、
まるで音付きの絵本のように聴こえてくる。
バオバブの樹が面白くてぼくがアフリカに通いだしてもう三十数年になる。
それは単に、その姿、形が面白いということだけでなく、
人やいきものたちとの関わりの深さにひかれたのだった。
そしてその祭りを教えてくれたのもバオバブだった。
ある村でぼくがバオバブの樹を探していると、あの祭りの太鼓の音が聴こえてきた。
ぼくはまるで「ハーメルンの笛」のように、その太鼓の音に引き寄せられた。
案内されたのは村の広場だった。
ぼくが探していたバオバブの樹も当たり前のように立っていた。
きっと五百年も千年も生き続けてきたこの樹は、もう何百回も太鼓の音を聴き踊る
何代もの村人たちを見続けてきたのだろう。
そんなぼくの想いをつづったドキュメンタリー映画がこの春公開される。
この映画の中にもお祭りが出てくる。
沢田としきさんにぼくの「アフリカの音」を聴いてもらいたくなった。
(2009'1 こどもの本)