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去年(※1993年)暮れ、バオバブの木を観にセネガルに行った。
ぼくが初めてバオバブの木を見たのは二十年前のこと。
場所は東アフリカのサバンナだった。
一本一本に個性があり、その下で畑仕事をする人がいたり、象が背中をこすりつけていたり。
生きもの同士の関わりが何千年何万年つづいているだろうこの木の風景が印象的だった。
それから何年かたって、小川待子さんと川田順造さんの『バオバブ』という絵本をみつけて、
ぼくはますますバオバブに憧れた。
この絵本は、ぼくが知らなかったアフリカの歴史を背景に語られる、人と木の物語だ。
今回の旅で、ぼくはたくさんのバオバブを見ることができた。
そしてこの木と人との関わりの深さに驚いた。
葉が実が幹が、食料に家畜のエサに薬に道具にお墓に―。
ぼくはしばらくこの木とつきあってみようと思う。
(1994'2'17 東京新聞夕刊)