広い草原の中、楽しそうなぞうやキリンの親子の絵、ぼくの小さい時、
どこにでもあるような薄い絵本の中で出会った動物の、
この一枚の絵をおとなになった今でも忘れることができません。
あの絵は決して本当の自然の中の動物たちの姿ではないのではないか、
やっぱり人間が勝手につくりあげた動物たちの姿ではないのかー
そう思っても、アフリカとか野生動物とかくると、いつでも
パッと目に浮かんでくるのはこの一枚の絵なのです。
ぼくが、テレビの野生動物映画の撮影のため、
初めて東アフリカの草原に行くことになった時、
いちばん楽しみだったことは、絵ではない本当の動物たちの姿が
みられるかもしれないということでした。
それは、ぼくが小さい時から思い込んでいた一枚の絵が壊されることへの
不安と期待とでもあったのです。
(1975'4/母の友)