93年、CSテレビの仕事でセネガル(西アフリカ)を訪れたとき、
人々がバオバブと共に生きる姿を目の当たりにしました。
バオバブは悠々と大地の時間を生き、セネガルの人々はその流れの中で
ゆったりと暮らしていました。
私が子どもだった頃、原っぱで見つけたロープと棒切れを持ってきて
「さあ、これでどうやって遊ぼうか?」と言うところから遊びが始まりました.
ものがあまりないところで育つと、心が豊かになります。
物があふれている今の日本は、育つ子どもも育てる親も大変です。
セネガルの子どもたちはよく遊び、よく働きます。
大家族できょうだいがたくさんいて、みんな目がきらきらしています。
いつの頃からか人間は大地の時間の流れに逆らって早く走るようになりました。
自分たちの子どもや身近にいる動物や植物までも引き連れて、一年中卵を産むニワトリを作り、
少ない面積でたくさん収穫できる米も作りました。
年々その歩調は、スピードを増しているようです。
アフリカ大陸に隣り合うマダガスカル島の人々も近年は
バオバブの皮でロープを作らなくなったそうです
安価のビニールのロープが手に入るようになったからです。
もはや時間の問題で、セネガルの人々とバオバブの共生の姿も失われていくかもしれません。
今撮らなければ、との思いに駆られて撮影を進めています。
来年6月には一人の少年とその家族とバオバブの物語を完成させる予定です。
(2007'9「風」VOL.62 (株)おもちゃ箱発行)