バオバブだより / 本橋成一監督作品 バオバブの記憶

2008.12.24
心で、さがすーバオバブー

バオバブという不思議なかたちをした樹をはじめて見たのは、30年以上も前の、
アフリカでのことでした。

『星の王子さま』では王子さまを悩ます厄介な樹として登場するバオバブですが、
実はその使い道は100通りもあるという、人々の暮らしになくてはならない樹なのです。

バオバブの皮は屋根にしたり、ロープを作ったり、また染料や、薬にもなります。
果実はすっぱい味がして食べられるし、その殻は食器や楽器に、
タネからは食用油と石けんが作られます。

子どもたちがバオバブによじ登って葉を下に落とすと、それは家畜のえさになります。
葉を乾燥させ、粉にしたものは人間の食べものになります。

何百年、何千年と生きて大きく育ったバオバブは一つとして同じ形のものはありません。
他に目印になるものがないサバンナで、大きなバオバブには名前がついていて
「○○のバオバブを左に曲がって・・・」というように、道しるべになるのです。

 『バオバブは、植えない、伐らない』と、西アフリカの人々はいいます。なぜなら、
『大地の神様の許可を得てはじめて芽が出る』のだから。

こんな面白い話も聞きました。

道路を作るのに、どうしてもバオバブにどいて貰わなければならないとき、
ブルドーザーの助手席に祈祷師が乗り、樹の声を聞くの出そうです。
「まだ待てといっている」という祈祷師の言葉に、工事は中断。
一ヶ月後、三度目の問いかけに樹から「明日、出て行く」という返事が返ってきたのだとか。
 
(2007'9「風」VOL.62 (株)おもちゃ箱発行)

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